■トレッドの意味
自転車のタイヤにはスリックタイヤと呼ばれるものでもトレッドパターンがあります。そもそもトレッドは何のために付いているのでしょうか。カーレースのF1などではお馴染みですが、トレッドが全くないスリックタイヤは、グリップも良く、こういった高速の舗装路のレースでは非常に高い性能を発揮します。しかし、グリップの限界点からスリップ状態までの移行が急激であるため、非常に高いドライビングテクニックを持った一握りのレーサーが限界まで速度を追求する場合には良いのですが、一般のドライバーには問題があるようです。トレッドはこのグリップ状態からスリップするまでの変化を、緩やかにさせる働きがあります。また、F1でも雨が降れば突然溝の付いたタイヤに履き替えるように、水はけをよくするためでもあるのです。
■トレッドパターンの向き
このトレッドパターン、よく見ると進行方向に対して前後対称、すなわちユニディレクションと言ってどちら向きに取り付けてもいいものと、そうではない回転方向が指定されている物があります。
回転方向が指定されているものには、取り付けるときに悩まなくて済むようにタイヤの側面に回転方向が表示されているものもあります。しかし、ものによっては何の表示もされていない場合もあります。「タイヤのトレッドパターンを見て判断しろ」といういうところでしょうか。
進行方向に向かってタイヤ上面でハの字形、接地面では逆ハの字形になるようにタイヤは取り付けます。こうすることによりトレッドはタイヤ中央部分の水を両サイドに排出する役目をします。これを逆に取り付けてしまうと、両サイドにある水を中央部分に導くことになってしまうので注意が必要です。
■雨の日の空気圧
雨の日は路面全体が水で覆われた状態にあります。このとき、タイヤの空気圧は高い方が良いか低い方が良いか、悩むところですね。結論から先に言うと高い方が良いのです。水にも粘性抵抗というものがあり、その形を維持しようとする性質が多少なりともあるのです。これは水の形を変化させようとしたときに抵抗力となるのです。しかも変化させる速度が速いほど抵抗力は大きくなります。タイヤが路面の水を切り裂いてその下にある地面に到達しようとするためには水のこの抵抗に打ち勝たなければなりません。空気圧が低いとこの抵抗に勝つことができず、タイヤが路面を捉える前にタイヤの方が変形してしまい、タイヤと路面の間に水膜を作ってしまうのです。いわゆる「ハイドロプレーニング現象」ですね。
■ロードノイズ
さて、トレッドパターンはロードノイズの要因にもなります。
タイヤの溝の内部に空気が閉じ込められ、圧縮された後解放されます。このときにノイズが発生するのです。ロードノイズの大きさはタイヤトレッドの変形の大きさに比例します。すなわち、ロードノイズが大きいほどタイヤトレッドが大きく変形しているわけであり、その分パワーロスも大きくなります。マウンテンバイクなどのオフロード用タイヤを舗装路で乗ると大きなロードノイズとともに進まない感じを実感するのはそのせいです。
※参考文献 タイヤの科学(講談社ブルーバックス)