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Lefthand Screw
■逆ネジ

機械の各部には逆ネジが使われていることがあります。機械用語辞典などで調べると「左ねじ」ともいうようで、英語では「Lefthand Screw」ですが、要は左回転で締め上げるねじのことです。自転車では左ペダルの軸、ボトムブラケットの右側、そして、最近では使われていませんが、旧式フリーハブのキャップの3ヶ所です。近所の自転車屋さんに「なんでこの部分が逆ネジなの?」と聞いてみたところ、「ネジが緩まないようにそうなっているんです。」との答えが返ってきました。当然予想された回答でしたが、本当にそうでしょうか?よく考えてみるとそれほど単純なものではないようです。


■ベアリングの動作

実は左ペダルの軸とボトムブラケットの右側の二つに逆ネジが使われているのはベアリングの動きが関係しています。ベアリングが動作しているときは通常下図のように回転方向と同じ向きに回転力が加わります。これはベアリングに対して転がり摩擦抵抗しか働いていないためです。


このように見ると左ペダルの軸やボトムブラケットの右側は力の加わる方向を考えればむしろ逆ネジでないことの方が合理的であるように思えます。


写真上 : 旧タイプのスポーツ車に使用されていたBBの構成

写真下 : ベアリング部の拡大(リテーナーは入っていない)


かつて、自転車の部品の精度は低く、ベアリングも現在のようなシールドタイプのようなものはなく、リテーナーさえ入っていないものが殆どでした。ベアリングのボールを受けるワンはプレス加工で作られたものもあり、軸に対して垂直方向の大きな力が加わると容易にその形が歪んでしまうというものさえありました。現在でも廉価品の自転車にはそのようなベアリングが使用されています。

■ベアリングが歪んだ場合

さて、ベアリングのワンが歪むとどうなるでしょうか。下図のようにリテーナーで支えられていないボールが行き場を失い、その場で回転を始めるのです。こうなると回転軸に加わった力がそのまま、ベアリングのワンを逆に回転させる力となり、もしこの部分が右ネジの場合、大きな力でこのネジ部分を緩めようとします。


■現在のベアリング

現在のベアリングはリテーナーでベアリング内の各ボールの間隔を一定に保つ工夫がされていたり、シールドタイプのボトムブラケットが登場してからは精度、強度供に上がったため、このような逆回転現象が起こることはありません。

■互換性の問題

そうなると、この部分の逆ネジは今や無意味なものとなるわけですが、自転車のパーツに限らず、機械部品というものは古いものが新しいものに置き換わるとき、常に互換性の問題が残ります。事実、イタリア方式のボトムブラケットでは右ネジが採用されていることからも、技術が進歩した現在では右ネジ左ネジの問題は単に規格だけの問題となってしまったようです。

                                   ※参考文献 機械用語辞典(日刊工業新聞社)